安威川ダムの安全を考える
安威川ダムは直下型地震に耐えられるか(その1)
問5.安威川ダム周辺や近くに活断層が多数、走っているとともに、かねてよりダムサイト(ダム堤体用地)の地質についても、色々問題が多いといわれています。とくに大地震があっても本当に大丈夫なのでしょうか。

ダム堤体用地には二十四本の断層が

 日本では安威川ダムのような地質条件と同様なところに、これまでいくつものダムをつくっています。 しかしどのような地質条件のところでも、ダムをつくる場合は慎重の上にも慎重に検討しなければなりません。
 いずれにしても安威川ダムの場合、ダム建設上の地質条件からいうならば、かなりの問題を抱えている地域にはまちがいありません。当初重力コンクリート式ダムとして計画されたものが、断層のずれなどに対して多少とも耐久性が認められるロックフイル式ダムに変更されたのも地盤の脆弱さゆえであると解釈せざるをえません。

<ダムサイト左岸側の断層はとくに要注意>
 地質状況について具体的にいいますと、大阪府が行なった調査結果でも、「ダムサイトには全部で八系統二十四本の断層が分布しており、とくにダムサイト左岸側には、北東から南西方向に伸びる七本の断層と北西から南東方向に伸びる四本の断層が分布しているなど複雑な岩盤状況を呈している」としています。とくにダムサイト左岸側の北東から西に伸びる断層は空中写真でも明瞭な線状模様が判読でき、その破砕幅も2メートルに達しています。大阪府は「活断層ではない」といっているようですが、位置や方向等からみて有馬高槻構造線やその副断層である馬場断層と関連する断層である可能性は否定できません。

<安全性について徹底究明の必要あり>
 大切なことは正確な地質状況を把握するとともに、それに対してどのような対策がとられようとしているかということです。 安威川ダムの場合、岩盤の脆弱部の除去や断層部の処理などに多額の工事費を必要とするわけですが、経済性やコストの関係で安全性が軽視される危惧が十分あるわけです。たとえば岩盤の脆弱部は除去し、堅い岩盤を基礎とする必要がありますが、大阪府はすべての除去は考えていないようです。
(ダムの基礎岩盤は一般に堅いほうからA、B、CH、CM、CLh、CLl、D部の七段階に分類されていますが、安威川ダムの基礎岩盤については、良好といわれるA、B部は全くありません)




安威川ダムは直下型地震に耐えられるか(その2)
問6.ダムサイト(ダム堤体用地)とともに、ダム湖周辺の地質についても、その中央を馬場断層が横切るとともに、色々問題点を抱えているときいています。豪雨時や大地震時に、斜面崩壊が起きて、いわゆるダム津波を起こす危険性は本当にないのでしょうか。
ダム津波の危険性の方が大きい
 この問題についてもダムサイトの地質条件と同様の考え方が大切ですが、安威川ダムの場合、比較すると、ダム湖周辺の地質の方がさらに多くの問題点を抱えているといわざるをえません。大阪府や茨木市自身がダム湖周辺のほとんどの地域を地すべり危険箇所、土石流危険渓流、急傾斜地崩壊危険個所、山腹崩壊危険地区などに指定しており、また過去の豪雨災害時にも斜面崩壊が起こっているわけですから、行政が「問題なし」というのは矛盾しています。もし大地震が発生した場合、ダム湖周辺の斜面崩壊によって、規模は別としてある程度の大きさのダム津波発生の危険性がないとはいえません。むしろこの方がダム堤体決壊よりも可能性としてはより高いのではないでしょうか。

 

<ダム完成後の水位変動による影響調査を十分に>
 たとえばダム湖最北部の車作地区についても、大阪府は、「地すべりと定義されるような大規模なものが発生する可能性はきわめて小さい」としていますが、とくにダム完成後の水位の急激な変動に対してどのような影響が予測されるかの詳細な調査が必要です。

<馬場断層の横切る斜面地の大規模盛土造成は危険>
 ダム湖周辺の計画で問題のあるのは、ダム湖右岸部で馬場断層が横切り、水位変動の影響を受ける沢部(生保地域)に大規模な盛土造成(盛土高最大四十メートル、盛土面積約七万五千u)をしようとしていることです。大規模な盛土地の危険性は兵庫県南部地震による震災で、いやというほど思い知らされました。
また盛土のゆっくりしたすべりや地盤沈下、擁壁崩壊などの色々な問題が起こりえることを指摘したいと思います。



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