安威川ダムの安全を考える
馬場断層は本当に終息しているのか

馬場断層は断層を境に、古い地層(花崗岩類)が新しい地層(大阪層群)にのしかかるような型をとる、逆断層で上下に最大六十メートルずれています。
問2.安威川ダム堤体から350メートル、ダム湖を横切る馬場断層について、大阪府は「最終活動時期は約9万年前であり、よってその活動は終息しているものと考えられる」としています。この馬場断層は再活動する可能性はないという断定は妥当なものなのでしょうか。また兵庫県南部地震の場合、地震波が断層の破壊方向に沿って伝わり、断層の延長線上は被害が大きかったともいわれていますが本当でしょうか。

「馬場断層は終息」の根拠は不十分

 「馬場断層は終息している」という断定は大胆すぎます。
まずこの断定に用いられた年代測定方法である熱ルミネッセンス法(断層の破砕部の鉱物を分析する方法)の信頼度についても、「第四紀の地学現象に対しては将来性のある年代測定法であるが、なお今後の研究の余地がある」といわれ、まだ色々な見方があるといったほうがいいでょう。
仮に最終活動時期が約九万年前ということが正しいとしても、だから活動は終息しているということにはなりません。馬場断層程度の大きさの断層では、一般的に活動の周期は長いとされています。
さらに有馬・高槻構造線の主断層である真上断層や安威断層などが活発に動いてきたことは確かですから、その副断層である馬場断層もときに連動して動く可能性があると考えるのが自然です。当然、馬場断層が他の断層の活動によって、連鎖的に動くことも考えられます。また馬場断層が独自に動く可能性も完全に否定はできません。いずれにしても問一でも述べましたように、断層の再活動の可能性の大小を、明らかにするためにはかなり広い範囲にわたって、地盤にストレスやひずみが、どの程度たまっているかを調査・研究する必要があります。
なお兵庫県南部地震では動いた断層の延長線上の動かなかった断層付近も被害が大きかったことが認められています。
これは地震波の一部が断層に沿って伝わったことによるといわれています。




兵庫県南部地震で、ダムの安全性は証明されたか
問3.兵庫県南部地震では高速道路や新幹線など公共の土木構造物の多数が倒壊するなど、いわゆる公共施設の「安全神話」が崩壊しました。日本の土木構造物の耐震基準のどこに問題があったのでしょうか。ダムの場合は淡路島の野島断層近くの常磐ダムの堤体の上の道路が波打ち、さらにダム湖の斜面も崩壊し、貯水が中止されたと聞きました。大阪府は「常磐ダムの場合は、一部軽微な被害があっただけで地震に対する安全性は証明された」ともいっています。どう判断したらいいのでしょうか。

北山ダム被災状況
西宮市北山ダム被災状況

ダムも例外ではない。むしろ危険性を証明

 従来の耐震基準は、関東大震災の際の震源からかなり離れた東京での揺れ方を基礎に立てられたものが、もとになっています。その後の震災の経験によって、改訂されてはきましたが、直下型地震の特徴に十分対応したものにはなっていないことが兵庫県南部地震で露呈しました。今後さらに相当な研究と検討が必要です。しかし改訂しようにも、山地内に関しては、直下型地震の場合表層地盤の動きとそれによる山腹崩壊との関係やそれらの構造物(たとえばロックフイルダム)への影響などはまだろくにわかっていないので、信頼できる基準ができるかどうかは疑問です。兵庫県南部地震では、埋立地で上下動が予想以上に大きかったことが明らかになっていますが、山地内でも局部に上下動が大きかった所があることが、「跳び石」(地震の強い揺れによって石が跳ぶこと)などという現象を根拠にいわれています。いずれにしても、人間が考えだした技術力で自然を制御することは、簡単なことでは決してありません。

<西宮市北山ダムでは一年かがりしで大復旧工事が>
 常磐ダムで貯水を中止したのは、もちろん復旧工事の為もありますが、水を貯めておいては危険であると管理者が判断したからでしょう。兵庫県西宮市の北山ダムでも、水を抜いて、一年がかりで大復旧工事をしなければならないほどの被害を受けました。とくにダム堤体の石張りの一部とともに、貯水池全体の堤の石張りが全面的といっていいほど崩れ落ちているのも問題です。したがってダムの安全性が証明されたのではなく、全く逆です。



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