安威川ダムの安全を考える
北摂大地震の可能性は
問1.兵庫県南部地震直後は北摂地域を横切る有馬・高槻構造線を震源として、大地震がきわめて近い時期に発生して、大被害を受ける可能性が高いといわれました。しかし国の調査で、有馬・高槻構造線が約四百年前に動いた形跡があるので、この地域での大地震発生の可能性は当面低くなったといわれています。どのように考えたらいいのでしょうか。とくに有馬・高槻構造線は、当面動く可能性は低くなったという判断には疑問をさしはさむ余地は全くないのでしょうか。

油断は禁物。日本列島全体が活動期に

 近畿はもちろん日本列島全体が地震の活動期に入ったという見方が学者の一致した意見です。活動期とそうでない時の地震発生状況が全く違います。(下部地図参照)
したがって結論からいいますと、有馬・高槻構造線の活動経歴の調査結果だけを根拠に、「当面この地域が大地震に襲われる可能性はなくなった」という判断をするとしたら、それは正しくないと考えます。
なぜなら、その地域にある活断層の活動周期とその地域が地震に襲われる周期とは全く違うからです。具体的にいいますと普通は有馬・高槻構造線のような一級の活断層の場合、その活動周期は約一千〜二千年といわれていますが、そうすると、この地域が大地震に襲われる周期も約一千〜二千年に一度かというと、そうではないからです。すなわち有馬・高槻構造線が動かなくても、近くの別の断層が動けば、北摂地域も大地震に襲われることになります。それほど、この地域周辺には大地震の発生の原因となる多数の活断層が密集しています。

<伏見地震では震源から七十キロも離れた神戸市でも被災>
 今回の兵庫県南部地震では、淡路島や神戸市の西部の活断層は動きましたが、神戸市東部や西宮市の活断層は動かなかったと一般に考えられています。しかし大きな被害を受けたのは西宮市から宝塚市までにわたり、大阪府北部なども相当な被害を受けました。また以前の地質調査所の発掘調査によれば、神戸市灘区の古墳でも四百年前といわれる慶長の伏見大地震の痕跡と考えられる陥没や地すべりのあとが認められています。近くの灘区の山中を通る活断層が、その時に動いたかどうかは別として、ともかく灘区あたりでは四百年の間をおいて、大地震に襲われたことになります。

<地震が起こる可能性の検討には広域的な調査が必要>
 兵庫県南部地震以後の通産省工業技術院地質調査所の有馬・高槻構造線の三カ所(茨木市安威断層、箕面市坊島断層、川西市花屋敷南縁断層)の掘削調査から、いずれも四百年前の慶長伏見大地震の際に活動したと判断してさしつかえない結果がえられました。これらのことから近い将来にこの地域で有馬・高槻構造線が活動して、大地震が発生する可能性は当面低くなったと考えるのが普通です。
また有馬・高槻構造線が活動する可能性が低くなったとすれば、この地域が大地震に襲われる可能性も、以前考えられていたよりは低くなったということも事実です。
しかしご存じのように地震はかなり広い範囲の地盤にストレスがたまり地盤がそれに耐えられなくなって破壊がおこり揺れる現象で、破壊の動きの跡が断層です。ですからたとえば北摂地域でいずれかの断層が動く可能性があるかどうかを本当に明らかにするためには、過去の地震の経歴から判断することも大切ですが、同時にかなり広い範囲にわたって地盤にストレスやひずみがどの程度たまっているかを見る必要があります。


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