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川は生きている 小学校五年女子 この夏は記録的な猛暑が続き、各地で給水制限、断水が行なわれるなど、雨がない。日本全国が雨を待ちわびている。 私の町の安威川も、毎年夏にはこどもたちが昼間は水遊びにあふれ、魚取りや水辺の昆虫採集に夢中になり、夜になると大人も夕すずみにやってきて、花火やキャンプなどをして、ゆったり時を過ごす。しかし今、安威川には水がない。すっかり干上がって向こう岸まで歩いて行け、ひび割れた川底のあちこちに、魚やカニの死がいがころがっている。こんな川をみるのは初めてだ。 わたしは今まで、どんなに晴天が続いても川には水が流れていて、当然だと思っていた。しかし、この本を読んで、山と水と土のつながり、森林の役割の重要性を知ってから、安威川を見るたびに、不安な気持ちになりだした。 そして私は、四年生の社会科で習った安威川と茨木川の歴史を思い出した。もともと茨木は土地が低く、大雨が降りつづくとたびたび洪水を起こした。人々は努力を重ね、大改修工事をして、やっと現在の形になった。がんじょうな堤防ときれいに整備された河川敷をもつ今の安威川の姿を見ると、もう洪水の心配はなくなったかのように思えるが、そうではなく、上流の山を切り開いて多くの家が建てられたため、大雨が降るとすぐ川の水かさがふえ、新たな洪水の危険が生まれてしまった。そのため今度は、安威川上流にダムを作る計画が、現在すすめられているという。安威川上流には、まだ自然がたくさん残っている。緑の多い山々からわき出た冷たくてきれいな水の流れ、渓流づりや水すべりを楽しむことができる。ここにダムを作ったら、自然は、住んでいる人は、どうなるのだろう。一見、人々の生活を守るように思えることが、本当は自然を苦しめ、自分たちの生活をこわしていることを、だんだんわかってきた。私は、現在ほとんど洪水の心配なく過ごせるのは、人々の知恵による大改修工事とがん強な堤防のおかげだと思っていた。しかしこの本を読みすすめるうちに、それだけではないことに気付いた。自然に守られていなければならないのだ。町から水田や畑や森林という雨を吸いこんでくれる自然のスポンジが消えたら、コンクリートで固められた町に降った雨は、どんなに高く強く築いた堤防もいずれはやぶってあばれ出すかもしれない。 私たちの生活や文化は、川と深く結びついている。そして川から大きな恵みを受けて暮らしてきたのに、人間は山をくずし、工場やビルや家を建て、川は堤防でしめ切ってしまい水を早く海に流すことだけを考えている。堤防のすぐ近くまで、建てた家や工場からは、ゴミや排水を川に流しこみ、川は汚れていった。川は生きている。私たちは川をもっと大切にしなければならない。自分の町を、わたしたちの生活を、自分たちの手で守っていかなければならない。川にゴミを捨てたり、汚れた水を流さないようにし、自然の中に生きる人間として、自然を守る努力を私自身していきたい。
(1994年・夏) |
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